「凡庸な作家のサバイバル術」の感想

以下のKindle本がなかなか面白かったので、感想をメモします。

作家のほとんどは、食うや食わずの生活をしています。ネットを活用して、どうやって生き残りを図るべきか?という内容。

凡庸な作家のサバイバル戦略──結局どうすりゃ売れるのさ—NPO法人日本独立作家同盟 第四回セミナー〈佐渡島庸平 鈴木みそ まつもとあつし 講演録〉 日本独立作家同盟セミナー講演録」(Amazon)

漫画ジャンルが主な話題ですが、文芸やビジネス作家にも通じる話でした。

「できれば電子書籍で稼ぎたい」という私のような趣味作家にも参考になる部分が多くて、購入した甲斐がありました。

いくつか面白かった部分をピックアップします。

なぜ呼吸するように書く必要があるのか

プロになるためには、「創作力」(質)を上げるルートと「制作力」(量)を上げるルートがあるといいます。

昔だったら、漫画誌の懸賞に投稿して、編集者に認めてもらって、時間をかけて創作力を上げるルートがありました。凡庸な作家にとっては、そうやってプロになるルートは期待薄です。

今は、ネットの投稿プラットフォームを通して読者に直接作品が届くようになりました。その場合、早く大量に継続的に作品を出し続けることが必要条件になります。

凡庸な作家がプロになりたいなら大量に書くことが大前提となります。

食えるようになるのはコンテンツが貯まってから

昔のように、漫画雑誌から原稿料が入り、単行本でも印税がドカッと入り・・・という時代ではありません。

電子書籍でリリースしてもたいして売れないし、プラットフォームからわずかなロイヤリティが得られるだけです。

しかし、毎月わずかな収入が継続的に得られるキャッシュフローになったといえます。

そこで、リリースしたコンテンツが大量に蓄積されると、毎月安定的に収入が入ってくる可能性があります。

たしかに、私がしょぼい電子書籍を14冊出しただけで、年間5万円の収入が数年にわたってあります。

ということは、1400冊出せば年収500万だから食べていける(笑。私のレベルでは、累積されるまでの期間が長すぎて大変です。

作品だけで稼ぐのは無理

1冊1冊の作品で勝負!というのは、今後のコンテンツ業界は無理そうです。特に凡庸な作家は無理。

出せば出すほど、評判や収益が累積するような仕組みを作るしかありません。

そのためには、「作品名」ではなく、「作者名」でブランディングする必要があります。

作品はあくまで自分をブランディングするための集客手段といえます。

そして、SNSで接触手段を増やし、無料サービスと有料サービスを分けて、コアなファンには大金を払ってもらえるサービスを出す。

こういった戦略は、ネットマーケティングで語り尽くされているかも知れませんね。

1つ1つの作品で勝負しても、ストック収益にならないから、まずサバイバルできない時代です。

作者名でファンを獲得して、コアなファンだけに多額の金を払ってもらう方向を模索するしかありません。

このあたりは音楽業界と同じですね。楽曲は無料でばらまくこと。SNSを活用すること。ファンを集めて、ファンクラブを作って、ライブとグッズで稼ぐこと。

1980年代から録音テープが普及して、音楽は無料でコピーされまくった歴史があります。そういう過酷な環境を生き抜いてきたので、音楽業界はサバイバル戦略で先行しています。

凡庸な作家も、凡庸なアーティストも、サバイバルする方向は同じようです。

作品はあくまで集客手段であって、自分自身を売りに出してファンを獲得して、そのファンに金を払ってもらう。そのためには、高度なマーケティング能力が必要となりそうです。

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