通常の電子書籍は、複製できないようにDRM(デジタル著作権管理)がかかっています。
しかし、中には、商業出版であるにも関わらず、DRMをかけていない電子書籍があります。
DRMフリーの電子書籍ストア(出版社)について解説します。
権利者がDRMを判断する
電子書籍にDRMをかけるかどうかは、その本の出版権を持っている出版社が判断しています。
「進撃の巨人」の電子書籍にDRMをかけるかどうかは、講談社が判断するわけですね。(作家も意思決定には関わることは可能だと思いますが)
そのため、どこかの電子書籍ストアが、自社ストアだけ「進撃の巨人」をDRMフリーで販売するなんてできません。
ということで、DRMフリーの電子書籍は、特定の出版社の電子書籍のみとなります。通常、その出版社の直営ストアで、DRMをかけずに販売しています。
DRMフリーの電子書籍
では、DRMをかけずに(=複製できる状態で)電子書籍を販売している出版社はどこでしょうか。
- 技術評論社
- オーム社
- オライリー・ジャパン
- 明治図書出版
- ディスカヴァー21
- 達人出版会
こういった出版社では、自社の電子書籍ストアでDRMフリーのまま電子書籍を販売しています。
なぜDRMフリーで販売できるのか
DRMフリーで販売しているからといって、複製して再配布することは禁止しています。(当たり前ですが)
あくまで自分の楽しむ範囲でのみ複製ができます。
しかし、こっそり複製をして配布する人がいるかも知れません。そのための防止策がとられています。
それぞれの電子書籍には、販売した時にユーザーを識別するIDが埋め込まれています。
電子書籍を勝手に複製してネットでばら撒いたりすれば、どのユーザーの電子書籍がばら撒かれているのかわかってしまうのです。
以下、技術評論社の電子書籍ストアのヘルプです。
Q:電子コンテンツにDRMはかかっていますか?
A:Gihyo Digital Publishingで購入された電子コンテンツには,いわゆるDRMと呼ばれている利用や複製を制限するような機構は入っていませんが,購入されたユーザ様を識別できるようなユニークIDとメールアドレス等の個人情報を付加しております。
こうしておけば、ネットでばら撒かれたのを見つけたときに、法的手段も取りやすくなります。そのため、違法な複製を禁止するインセンティブをユーザーに与えることができます。
DRMをかけないメリット
このようにして、DRMフリーのまま電子書籍を販売することは、出版社にとって大きなメリットがあります。
それは電子書籍ファイルの管理をユーザーに一任できることです。
DRMをかけてしまうと、デバイス間の移動ができないため、クラウドから常に再ダウンロードできるシステムを維持しなくてはなりません。
上記のページでも紹介しましたが、再ダウンロードできないとユーザーにものすごい不便を強いることになります。当然、出版社が批判を受けることになりそうです。
DRMフリーにしておけば、電子書籍の事業からいつ手を引いても、ユーザーの利便性を損なうことがありません。気楽に事業の進退を決められます。
ということで、DRMフリーで電子書籍を販売している出版社は、直営の電子書籍ストアを開設したけど、将来的に撤退の可能性を視野に入れているような出版社かも知れません。
DRMフリーにできる出版社は一部
DRMフリーにできる出版社は一部です。
上記でリストアップした出版社は、技術系に偏っていますし、ユーザー層が大人の出版社だけです。違法であることを知りつつ配布するようなユーザー層ではありません。
これが人気コミックだったりすると、後先を考えずに若者たちが複製して配布してしまうことでしょう。
いくら識別IDが埋め込まれていても、よく理解せずネットでばら撒く人がいるはずです。また、ハッキングされてファイルが盗まれた可能性もあります。
そもそも、人気コミックは需要が大きいので、ネットでばら撒かれた違法ファイルに読者が飛びついて収集がつかなくなる怖れがあります。
ということで、DRMフリーの電子書籍は増えないと予想しています。
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