東野圭吾の電子書籍がない理由

東野圭吾さんは日本有数の人気作家で、映像化されている作品も多数あります。

電子書籍を探している人が多いと思いますが、東野圭吾さんの小説は電子書籍化されていません

本人が「電子書籍化を許諾しない」旨を公言しています。

電子書籍ストアを検索しても、コミック化した作品しかヒットしません。

がっかりしている読者が多いと思います。

なぜ、電子書籍化しないのか探ってみました。

追記
2020年4月17日、東野圭吾さんの小説が電子書籍化されるニュースが飛び込んできました。4月24日から配信開始するそうです。

以下の記事は、電子書籍化される前に書いた内容です。記事の最後に「追記」として、電子書籍化についても解説します。

東野圭吾さん本人の見解はネットになかった

「なぜ、東野圭吾は電子書籍化しないのか」について、かなり深く検索しましたが、本人の見解が読めるページはありませんでした。

「電子書籍化しない理由は~である」

こんなわかりやすい発言があると期待していましたが、見つかりません。

以下、「電子書籍化しない」理由として、参考になりそうな部分を集めてみました。

書店で買うお客さんを優先したい

ずいぶん昔になりますが、2005年のSankeiwebで以下の発言が報道されました。

(産経新聞の記事は削除されているので、当時の記事を引用したサイトをリンクしておきます)

作家の東野圭吾さんは「利益侵害だけを理由に、著作権を主張しているわけではない」と、強調する。「作家、出版社は、書店で定価で買ってくれる読者によって報酬を得、次の本作りができる。書店で買う人、新古書店で安く買う人、レンタル店で安く借りる人、図書館で無料で読む人が、同じ読書サービスを受けるのはアンフェア。より早く新刊を読めるなど、書店で買うお客さんを優先したい」
引用元

古本屋で安く買う読者や、図書館を利用する読者が「同じサービスを受けるのはアンフェア」。この発言は、賛否両論ありました。

お金を出してくれた読者を大切にするのは、出版文化を守る上でも当然のことです。しかし、「中古」「図書館」を否定的にとらえるのは消費者の感覚とズレているかも知れません。

電子書籍と関係がないようですが、東野圭吾さんの基本的なスタンスとして抑えておきたいところです。

中国の海賊版に激怒

次に、2011年の話。東野圭吾さんの小説は中国でも大人気でした。

しかし、中国で海賊版が出回っていて、それに激怒したというエピソードがあります。

中国では、海外の人気小説を勝手に翻訳して、それを電子書籍として頒布する海賊版が横行していました。

お金を出して正規本を買ってくれた中国の読者のためにも、海賊版に激怒するのは理解できることです。

このエピソードから、電子書籍にたいして根本的な不信感を持ったことが推測されます

というのも、紙の本はコストがかかるので、海賊版が流通することはまずありません。電子書籍だからこそ、海賊版被害が拡大するわけです。

スキャン業者と闘う

同じく2011年、東野圭吾さんら作家7人がスキャン代行業者を提訴しました。

当時、盛んにニュースになった「自炊業者」との闘いです。自炊とは、紙の本をスキャナーで電子書籍にすることです。

東野圭吾さんら作家7名がスキャン代行業者2社を提訴――その意図
スキャン代行業者に対して著作権者がとうとうアクションを起こした――浅田次郎氏、大沢在昌氏、永井豪氏、林真理子氏、東野圭吾氏、弘兼憲史氏、武論尊氏の7名を原告とし、スキャン代行業者2社に対し原告作品の複製権を侵害しないよう行為の差し止めを求め...

上記の記事で、東野圭吾さんは、以下のように言っています。

この問題に関しては、個人的には電子書籍と全然関係がないと考えている。

たしかに、「スキャン代行業の問題」と「電子書籍化するかどうか」は関係がありません。

しかしながら、作品が電子化されることで、上記の中国海賊版のようにコピーが出回ってしまうリスクがありました。

個人が自炊した場合、DRMなんてかけないわけですから

やはり、「電子書籍」と「海賊版」は密接だという直観があったのではないでしょうか。

この裁判に勝利して、スキャン代行業者は壊滅しました。自炊代行は一気に下火になります。

出版文化の激変

電子書籍化に消極的な作家は多いです。

宮部みゆきさんもその一人です。

この記事でとりあげましたが、今まで出版文化を支えてきた方々のために、電子書籍化は見送っている意向を表明されています。

宮部みゆきさんも東野圭吾さんも同じミステリー作家で、国民的な人気作家、年齢も2歳違いで同世代、電子書籍化に消極的・・・と共通点が多い。

電子書籍化に消極的な理由も、近いものがあるのではないかと推測しています

電子書籍が普及すれば、「出版流通で働く人、本屋さん、営業マン、デザイナー、製本・印刷屋さん」すべてがリストラ対象です。

その代わりに、国内外のIT企業がプラットフォーマーとして猛威を振るいます。

この時代の変化に、まだ納得されていないのかも知れません。

海賊版が横行する電子書籍にたいする根本的な不信感、そして既存の出版文化が破壊される危機感

東野圭吾さんが電子書籍化を拒むのは、このあたりが理由ではないでしょうか。

※追記 2020年4月から電子書籍化

記事の最初の追記でもお伝えしましたが、東野圭吾さんの小説が電子書籍化されます。

2020年4月24日より以下の7作が電子書籍で読めます。

  • 白夜行
  • 容疑者Xの献身
  • ダイイング・アイ
  • 流星の絆
  • プラチナデータ
  • ナミヤ雑貨店の奇蹟
  • 疾風ロンド

なぜ、電子書籍化されることになったのか?

出版社の発表によると、東野圭吾さん本人の意向とのこと。

2020年4月現在、新型コロナウィルスの影響で外出自粛が続いています。

家の中で読書を楽しんでもらうために、という思いから電子書籍化を決めたそうです。

これは推測ですが、東野圭吾さんは電子書籍化の流れはもう止まらないと感じていたのではないでしょうか。

特に若年層の読者は、紙の本よりもを電子書籍の方が身近になっています。ずっと電子書籍化を拒むのは現実的ではありません。

そんなときに、「外出自粛」「巣ごもり消費」の社会情勢となってので、決断したのだと思います。

現在は7作だけですが、いずれ電子書籍化する作品は拡大していくはずです。

→ 東野圭吾の著者ページ (Amazon.co.jp)

コメント

  1. マカロニ より:

    作家さんのお気持ちは分かりますが、病気や立地の関係で本屋さんに行けないので、私としては電子書籍で発行されると助かります。

  2. 森 秀幸 より:

    目が悪く、単行本や新書・文庫等の文字が小さすぎて読めない。…ルーペのCMみたいですが
    本当です。電子書籍(iPad使用)では、文字が大きく表示され、助かっています。
     東野作品の電子書籍化を熱望いたします。
     PS 新潮さん、 エルモア・レナードの「オンブレ」も電子書籍化をお願いいたします。

  3. 匿名 より:

    もう電子書籍は当たり前の時代になってきてるのにそんなこと言ってる場合なの?