電子書籍を作るときに、テキストの分量について迷ったことはないでしょうか。
文字数が少ない本を出版するのは気が引けるし、多すぎると書くのが大変です。
絶妙の文字数は、1万字だと思います。原稿用紙でいえば25枚。
(後で説明しますが、小説のようなエンタメ系は多めの文字数が必要)
この数字には、かなり自信をもっています。根拠を以下に書きます。
電子書籍の価格と文字数は関係なし
まず、電子書籍の価格との関係から考えます。
電子書籍の販売価格は自由に設定できます。
仮に、99円と500円の電子書籍を比較したときに、文字数をどのように考えればいいでしょうか。やはり、価格が高い方が文字数が必要でしょうか。
「価格が高いから大量の文字数が必要」というのは、ありがちな錯覚です。
500円だからといって、3万字も5万字も必要ないのです。
大量のテキストがあるからといって、読者は必ずしも有り難がるわけではありません。項目ごとに読み飛ばして、必要な情報を取り出すのが電子書籍なのです。
大切なのは、読者にとって有用な内容であるかどうかです。
電子書籍の価格は、情報のオリジナリティや有用性を考えて、決めるべきです。テキスト量で決めるものではありません。
逆にいえば、99円という低価格だからといって、文字数を少なくするのも間違っています。
2000文字以下の少ないテキスト量だと、ブログ記事1ページ程度の内容です。
いかにも手抜きしている印象があり、「99円なんだから文句言うなよ」と言わんばかりの電子書籍は、読者にとって悪い印象しか残りません。
個人出版本と流通本とは別物
大手出版社から出されている新書は、テキスト量がおよそ12万字です。
そういった新書は800円前後で売られていて、電子書籍になったときにも500円から800円で販売されています。
12万字といったら原稿用紙で300枚。かなり大変です。
ここでよくある誤解は、電子書籍を個人で作る場合に、その文字数を目安にしてしまうこと。
個人出版の電子書籍は、出版社の流通本とはまったく別物です。違った次元の商品なのです。
個人の出す本は、ビジネス関連なら情報商材と呼ばれるものであり、エンタメ関連なら同人誌に近いものです。
希少性、個性、手作り感が売りなのです。
ですから、流通本のテキスト量はいっさい無視して結構です。読者は、文字数を期待していません。
読者と著者の両者にとって1万字が落としどころ
Amazonのkindleストアでは、それぞれの電子書籍で目安となるページ数が書かれています。
本来、電子書籍にはページという概念はありませんが、購入前の消費者にたいして、文字数を参考までに示すものです。
1万字の場合は、およそ40ページだと表示されます。
私は今まで、大量の電子書籍を買ってきましたが、1万字以上の文字数があっても満足感がまったく上がりません。結局は内容次第です。
一方で、1万字以下の文字数では、内容はともかく「物足りなさ」を感じました。
このあたりは主観的なものですが、他の方も感じていることのか、最近の電子書籍は文字数1万字に収束してきている傾向があります。
少ない文字数の電子書籍は、読者の不評を気にしてから文字数を増やして1万字に近づいている傾向があります。
多すぎる文字数の電子書籍は、著者たちが無駄だと気づいたのか文字数を減らしている傾向があります。
1万字というのは、読者にとっても著者にとっても、電子書籍のテキスト量の落としどころだと感じています。
エンタメ系は文字数が必要
ビジネス系の電子書籍は情報的な価値を売りにします。だから1万字で充分だと思われます。
しかし、ライトノベルのようなエンタメ系の電子書籍は、楽しむ時間を提供するものです。
文字数が少ないと、楽しむ時間が少ないことになり、電子書籍の価値が少ないことになります。
情報的な価値を売りにするなら1ページであっても値千金ということがありえますが、どれほど名作であっても1ページの小説で満足する読者は存在しません。
ということで、エンタメ系の電子書籍を出版するなら、文字数はやや多めに用意した方が適切だと思います。目安として、3万字をお勧めします。
追記 2017年9月
「電子書籍を出すなら文字数は1万字」ってのは、ネットで多くの人が提唱していました。
すごい発見かのようにドヤ顔で書いてしまって、お恥ずかしいかぎり。とっくに1万字は定説になっていました。
ただし、時間とともにユーザーの感覚は変化するので、ずっとこの定説が通用するとは限りません。
noteの影響力が増すにつれて、KDPの推奨文字数は少なくなる可能性があります。
逆に、Kindle Unlimitedのユーザーが激増したら、既読ページ数を稼ぐために推奨ページ数は増えるかも知れません。
今後の動向に注目しているので、何か気づいたら、このページで追記します。
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