kindle singlesは、50~100ページ程度のkindle本です。
価格も200円前後です。
個人出版のKDPではありがちな分量ですが、kindle singlesはプロ作家による電子書籍です。
将来的にkindle singlesが本の主流になると考えていますが、なかなか普及しません。
理由について考えてみました。
kindle singles(シングルス)とは何か
kindle singlesは、「著者が最も適切と思う長さで書籍を出版できるサービス」です。
紙の本とは違って、少ない分量で市場でリリースできる点に特徴があります。
著者がAmazonに提出し、Amazonが出版社となってkindleストアで販売します。
日本で2015年4月に始まりました。プレスリリースは以下です。
通常、30~150ページで構成されます。価格は、99円~399円。
イメージとしては、「新書の3分の1」ってところです。
プロ作家だけでなく、新進気鋭の新人もAmazonの判断で出すことがあります。
kindle singlesは本の未来
紙の本は一定のページ数がないと商品として成立しません。そのため、必要以上の文字数となりがちです。
電子書籍ならいっさいの制約がないため、今より文字数が少ない本が主流になると予想されています。
以下のページで書きましたが、「ほとんどの本は50ページでワンテーマの情報を伝えるパンフレットになる」と考えています。
kindle singlesは「本の未来」を先取りした新サービスです。
タイトル数が少ない理由
kindle singlesが始まってから3年近くたちますが、現在(2018年1月9日)のタイトル数はわずか67点です。
タイトル数が少ない理由は、kindle singlesサービスを利用する著者が少ないからです。
kindle singlesはあくまで著者がAmazonに原稿を持ち込むサービスなので、たくさんの著者が持ち込めばタイトル数は増えます。
プロ作家から見れば、電子書籍のシェアが小さいので売上が見込めません。
従来の出版流通を使って、紙と電子書籍の両方で出す方が合理的なのです。
将来的には爆発的に普及するか
現在、電子書籍のほとんどがコミックなので、一般書籍の電子書籍は2%程度のシェアしかありません。
将来、今の10倍くらい電子書籍が普及して、一般書籍の電子書籍でも20%のシェアになるかも知れません。
そうなったらkindle singlesに原稿を持ち込むプロ作家が大量に出てくるはずです。
そのとき、本の概念が変わることになります。
Amazonが出版することになるので、多くの出版社が苦境に陥るかも知れません。
今後、電子書籍のシェアが拡大するのにともなって、kindle singlesのタイトル数が増えるかどうかに注目しています。
kindle singlesのお勧めタイトル
現在、出版されているkindle singlesの中で、お勧めタイトルをご紹介します。
ロングレンジ
「重力ピエロ」の伊坂幸太郎さんによるオリジナル短編。
「久しぶりに実家に帰ったわたしは、引きこもり中の弟にある大事な相談をするが……。」
神保町奇譚 「花咲舞が黙ってない」シリーズ
「陸王」「半沢直樹シリーズ」の池井戸潤さんによる人気シリーズ。
本編は、中央公論新社「花咲舞が黙ってない」に収録されているので、kindle singlesによるばら売りとなります。
ばら売りの方が、気に入ったら買い進めることができるし、気に入らなければ損失が少なくて済みます。(kindle unlimitdの対象にもなっています)
新しいメディアの教科書
ITと社会についての論考を発表しているジャーナリスト佐々木俊尚さんの著書。
ネットとメディアの最新情報です。
追記:米Amazonで公募から直接委嘱へ
米AmazonがKindle Singlesの方針を転換したニュースが入ってきました。
それまで、Kindle Singlesの原稿は公募方式をとってきましたが、Amazonが大物作家に直接委嘱する方針にしたそうです。
KDPセレクトの延長線ようなインディーズ路線から、マスマーケティング路線への転換といえます。
Amazon出版の編集部が大物作家に執筆を依頼して、Amazonが出版することになります。普通の出版社と同じ方式を取ることにしたようです。
違いがあるとすれば、Kindle Singlesの特徴である「少なめの文字数で低価格」ということになりそうです。
いずれアマゾンジャパンもKindle Singlesについて同様の方針転換をするかも知れません。そのとき出版業界に激震が走ることになりそうです。
コメント