不思議なことに安部公房の小説が電子書籍で見当たりません。
1993年に亡くなった安部公房は、戦後の日本文学を牽引した作家のひとりです。海外での評価も高く、「ノーベル文学賞に一番近い作家」だと言われていました。
権利関係の問題?
ドナルドキーン氏との対談本「反劇的人間」は電子書籍化されていますが、それ以外の安部公房の電子書籍が見当たりません。
安部公房の小説といえば、「壁」「砂の女」「人間そっくり」「箱男」などが、50年代から70年代にかけて発表されました。
不条理な設定が多かったため「日本のカフカ」と評されていました。当人はこの評価が不満だったそうですが。
私が学生だった1990年代は、安部公房がよく読まれていました。
今でも読者は多いはずなので、電子書籍化されない理由は、権利関係のトラブルでしょうか。
第二次戦後派作家の中で安部公房だけがない
安部公房は、「第二次戦後派作家」と呼ばれる世代です。
従来の日本の私小説ではなく、西欧型の長編小説が取り入れられた世代です。
この世代には、三島由紀夫、大岡昇平、島尾敏雄、堀田善衛、井上光晴、長谷川四郎といった作家たちがいます。
この中で、安部公房だけが電子書籍化されていません。
この世代の中で比較しても、安部公房は読者が多いはずです。電子書籍化されない理由は、売れ行きの問題ではなさそうです。
安部公房の最近の話題
2013年に、女優の山口果林さんが「安部公房とわたし」をリリースしました。
安部公房の伴侶として暮らした時期を振り返っています。安部公房の素顔が描かれた貴重な資料となっています。
「安部公房とわたし」の真実
――女優の目を通して、大作家の実像が描かれています。正直、安部公房さんがこんな人間くさい人だと思いませんでした。書くものからすると、もっと気むずかしい人だと……。周囲からも「日本のカフカだ」なんて言…
東洋経済のサイトにインタビューが掲載されていました。
コメント
Kindleなどで安部公房の作品を読める日が来ることになるのはいつなのだろうか?音楽などもサブスクリプションの方式で配信されていないアーティストや作品などがたくさんある。音楽などは東京オリンピックが開催されるので、その時までに整備されることも予想されるが、文学の方はどうかな。祭嫌いが真髄である安部の作品などは、電子書籍化はさらに遅くなりそうな気がする。