日本ではまだまだ電子書籍の市場は成長しています。
しかし、米国では成長が止まっているとの報告があります。
電子書籍で先行している米国事情は、日本の数年後かも知れません。
米国の電子書籍はなぜ成長が止まったか
電子書籍の業界を理解するためのキーパーソンとして、大原ケイさんがいます。
米国の出版業界に詳しい方で、電子書籍で先行している米国事情を伝えてくれています。
以下の本を読んでみました。
2014年に刊行された電子書籍なので、情報は少し古いですが、状況は変わらないと思います。
2010年前後に電子書籍のブームがあって、その数年後の米国の状況です。
これからの日本の電子書籍業界の参考になるはずです。
この本の中で、「Eブックの急成長が止まったその理由は?」との章で、米国の電子書籍の市場成長が止まりつつあることが報告されています。
その理由は以下の3つ。
- Eブックに興味がある人にデバイスがひと通り行きわたった
- Eブックの値段の下げ止まり
- Eインク端末からタブレットへの移行
簡単にまとめると、「電子書籍を新しく始める人が減って、すでに電子書籍をはじめている人は電子書籍に費やすお金や時間が減った」ということでしょう。
電子書籍の競合相手は何か
上記の3番めの理由が重要だと思います。
電子書籍の市場成長というと、どうしても「紙の本の市場をいかに奪うか」という視点で考えがちです。
しかし、専用リーダーではなく、タブレットで電子書籍を読むスタイルが主流になり、電子書籍はアプリやWEBサイトと消費者の時間を奪い合うようになっています。
Kindle端末は電子書籍だけしか読めないデバイスなので、Kindle端末が普及することは電子書籍の市場が拡大することを意味します。
しかし、タブレットを使うスタイルが定着したので、同一デバイスの中で激しい競争が起きるようになりました。
もはや「紙の本か?電子書籍か?」という問題ではなく、「本なのか?ブログなのか?動画なのか?アプリなのか?」という問題になりました。
こう考えると、電子書籍の市場が頭打ちなのも納得です。
日本の電子書籍はいつまで成長するか
米国では2011年に電子書籍の売上が紙の書籍を上回りました。その後、3年ほどで成長が止まったことになります。
「電子書籍が過半数を超えて3年で成長が止まる」というのが、米国の経験則です。
日本の電子書籍の見通しはどうでしょうか。
日本の出版市場はとにかくコミックが大きいので、コミック電子書籍の動向に注目したいと思います。
2016年の統計では、紙と電子書籍を合わせたコミック市場全体は4500億円前後で、4割強の1900億円が電子書籍コミックです。
2017年か遅くとも2018年にはコミック電子書籍が紙のコミックを上回ると予想できます。
その後、3年くらい経つと、米国と同様に電子書籍の成長が止まるかも知れません。
東京オリンピックの2020年あたりまでは、電子書籍の市場は順調に増えそうです。
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