電子書籍はセールが多いけど再販制度はどうなってる?

電子書籍はセールの嵐です。無料だったり、1円だったり、50%OFFだったり。

しかし、著作物には再販制度があって、定価販売が強制されているはずです。どうなっているのでしょうか。

書店の本は今でも定価販売していますが、電子書籍は割引してもいいのでしょうか?

電子書籍と再販制度について調べてみました。

結論からいえば、電子書籍には再販制度は適用されません。

再販行為は基本的に違法

再販制度(再販売価格維持制度)とは、メーカーが小売店にたいして、販売価格を指示する制度です。

商品を作ったメーカーが、「この商品は300円で売れ」と小売店に強制する制度です。

これが認められてしまったら、流通での競争がなくなってしまいます。そのため、再販行為は独占禁止法で禁じられています

しかし、中には例外もあって、出版物やタバコ等については再販制度が適用されます。

出版物に再販制度が認められる理由

なぜ出版物には再販制度が認められるのでしょうか。

それについては、日本書籍出版協会のページでわかりやすく解説されていました。

一般社団法人 日本書籍出版協会 | 一般社団法人 d日本書籍出版協会
出版事業に関わる活動を行う一般社団法人日本書籍出版協会(JBPA)は、再販制度、著作権、出版契約などへの取組みを行っております。

一言でいえば、全国津々浦々の書店に、多様な種類の本を置くためには、定価販売を強制する必要があるからです。

流通段階で自由に競争してしまうと、書店に並ぶ本は売れ筋だけになり、遠隔地の本の価格は高くなる可能性があります。

それでは文化的な意義のある出版物の役割を果たせないので、出版物には再販制度が適用されます。

デジタルデータの電子書籍は関係がない

電子書籍はデジタルデータなので、置き場所を取りません。

売れ筋だろうと死に筋だろうと、無制限にネットに置くことができます

また、世界中のどこからでも、ネットにつながってさえいれば、アクセスできます。

そう考えると、「全国の書店に多様な本を並べるために再販制度が必要」という概念にはまったく当てはまりません。

再販制度は物理的な本のためのもので、デジタルデータの電子書籍にとってはまったく無意味であることがわかります。

電子書籍の再販売価格維持は違法

2014年、公正取引委員会は、電子書籍は再販制度に該当しない旨の見解を発表しました。

著作物再販適用除外制度は,独占禁止法の規定上,「物」を対象としています。一方,ネットワークを通じて配信される電子書籍は,「物」ではなく,情報として流通します。したがって,電子書籍は,著作物再販適用除外制度の対象とはなりません。

よくある質問コーナー(独占禁止法) | 公正取引委員会

出版業界は、紙の本と電子書籍の価格バランスが崩れるから、電子書籍にも再販制度の適用を求めていました。

しかし、公取委は、再販制度は「物」を対象としていて、「情報」は対象としていないと判断しました。

電子書籍は小売店が自由に価格を決められることが確認されました。

出版社が電子書籍を直接販売すれば違いはない

電子書籍には、定価販売の呪縛はありません。

しかし、これといって業界に混乱は起きていません。

というのも、出版社(あるいは取次)が電子書籍を直接ネット販売すればいいからです。

メーカーが販売業者を兼ねてしまえば、価格を自由に決められるわけですね。

ネット販売のメリットが流通の中抜き(=メーカー直販)であることを考えると、自然な流れです。

Amazonのような電子書籍ストアとは、販売業務委託契約をすることによって、販売主体を出版社にすれば、価格は出版社が決められます。

このことについて、wikipediaでサラッと書かれていました。

電子書籍では出版社側がつけた価格で販売を行うために、出版社が直接販売を行ったり、販売業務委託契約により販売の主体を出版社または取次販売業者とすることで書店に販売業務を委託して販売したりする販売形態になっていることが多い。

再販売価格維持 - Wikipedia

結局のところ、再販制度がない電子書籍についても、出版社の意向がストレートに価格に反映されています

  • 紙の本 :再販制度があるから、出版社が決めた価格で販売
  • 電子書籍:出版者が販売者となるから、出版社が決めた価格で販売

まったく同じことなんです。

電子書籍に再販制度が適用されなくても、紙の本と違いがほとんどありません。

セールが多いのは価格を変えやすいから

そうはいっても、電子書籍はセールを頻繁にやってます。

紙の本のように常時「定価販売」をしていません。

その理由は、価格の変えやすさにあります。

紙の本だと、特定の書籍だけ「10日間50%セール」のようなことができません。

全国の書店に「今後2週間、〇〇出版の20タイトルを50%OFFで売ってください」なんて指示できません。紙の本の価格を変えるのは大変なことです。

その点、電子書籍は価格をいつでも変更できるので、キャンペーンを打ちやすいです。

だから、売れると思えば、いくらでもキャンペーンで電子書籍を安くする。

結果として、紙の本との価格バランスは崩れまくってますが・・・。

売上を増やすためには、出版社もなりふり構っていられないみたいです。

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